◎ 1990年 3月 悲しき中国 ４ 香港、そして帰国。
３月19日（月）７時くらいには起床だったか。昨日夜、10時頃、（どこの駅だったろ？）二人乗り込んできたのは知っていた。で、今日は四人になって、俺だけ中国語を話せないから、話しに加われなくて、ずっとボーッとしてた。胡（ウー）さん（彼女はウーという名。香港の人だからか、「エンジェル・ウーと呼んで」と言っていた。）に、ラーメンをもらったりする。昼に食堂車でめしを食った。
時間通り、19時には広州着。それにしても、暑い。暑すぎるぞ。今回は真っ直ぐ、華僑酒店（来る時に泊まったホテル）へ向かう。歩いてて汗かいた。部屋に入ってから外へめしを食いに行く。その後、戻ってから風呂に入った。ドミトリーなんだけれど、一人なのでよかった。部屋にはクーラーがかかってる。今、21:30p.m. もう寝ようかな。
20日（火）６時過ぎ起床。半過ぎに、まず駅へ行って切符を買う。それからホテルに戻って朝食。９時頃にはチェックアウトする。人民幣もだいたい使い切った。10時半の列車で深センへ。イミグレや税関は、けっこうすんなり通過できた。さぁ、自転車、はたしてちゃんと返されるのか・・・。心配したけれど、返ってきた返ってきたよ！ ゴトンガタンと上の方から降ろされてきて、オイオイ頼むよって感じだったけれど、まずは一安心だ。
それにしても暑いな。列車内は冷房が効いていたけれど、香港に着いて、街の中を自転車担いで歩くのはとても無理な気がして、組み立てた。来る時泊まったホテルへ向かう。今日の部屋は、前回にまして狭い。何しろ自転車が（タイヤ取らないと）入らなかったもん。夕方は、街をブラブラして終わる。久しぶりにちゃんと冷えたビールを飲んだ。（中国には、ビールを冷やす習慣がないのか？ てか、冷蔵庫がないのか？！）今、20:30p.m. それにしても暑いぞ。
21日（水）８時頃起床。朝一で銀行へ行って、２万円両替する。そうしてあちこちの店を歩き回って、服を全部買い換えた。靴下、パンツ、Ｔシャツ、靴まで買う。あと、わざわざ空港まで行って、ノースウエストのオフィスを見つけて、帰りの便の予約の再確認というのを済ませてきた。＜後注・日本の代理店で教えられたノースウエスト航空のオフィスの電話番号が、実は古いもので繋がらず、さてどうしたものかと困っていたのだった。＞これで一安心。間違いなく帰れるぞ。
一つドキドキしたことが。胡さんと連絡をとって、明日会うことになった。＜後注・彼女とは広州駅に着いた時に一度別れたのだけれど、香港に住んでいるという彼女が、もし良かったら香港でも会いましょうと、連絡先を教えてくれていたのだった。＞デートみたい。夜は、中国風の店に入って注文したらカレーだった。今、22:00p.m.
22日（木）８時頃起床。９時に銀行に行って、すぐ買い物。時計をまず買った。高い買い物だったけど、まぁいいか。それから色々と友達にお土産なんぞを。Ｙちゃんにももちろん・・・。でももし、もらってもらえなかったらどうしよう。ちょっとした冒険だった。しっかし、散財したなぁ。香港ではガンガン買い物しようと思っていて、本当に、こんなに買っちゃうなんて！ なにしろあと少しで、空港税＄100 が払えるかどうかって限界で、それくらいにしかお金残ってないんだもん。
14時に胡さんと待ち合わせだった。すぐにわかった。彼女に案内してもらって、香港サイドの公園へ行ったり、ケーブルカーで山に登ったり、夕食もおごってもらっちゃった。＜後注・天安門事件があって以来、将来香港が中国へ返還されるのを見越して（カナダなどの）外国へ移住してしまう香港人がすごく増えてきているのだという話を胡さんから聞いた。胡さんの友達も何人かは海外へ出て行ってしまったそうなのだが、彼女は、中国の青島に中国人の婚約者がいるので、近いうちにお嫁に行くことになるのだと話してくれた。そしてなぜか、一緒に見て欲しいと胡さんに頼まれ、彼女が結婚指輪を買うことになっているとかいうお店なんかを、二人で覗いたりしたのだった。中国へお嫁に行くの、不安なんですか？ って、その時の俺は、彼女に聞けなかった。その時の俺はヒゲがぼうぼうで、「あなたはクマみたいに見えるわね。」と、ニコニコしながら彼女は話していた。＞尖沙咀の街に戻ってきてから、彼女と別れる。最後の一日は、おかげで楽しく過ごせました。ホントに色々ありがとう。
＜後注・別れ際、「タカシ、あなたの部屋はコンビニエントなの？」って胡さんに聞かれた。え？ いや、とんでもないっす。全然不便で安〜い部屋です。そう言いながら俺は笑って、手を振って別れた。それを聞いて胡さんも、恥ずかしそうに、笑って手を振ってくれた。・・・え？ ・・・。どういう意味？ すみません、ちょっとすみません、今の俺なら、ちょっと違う返事を用意できるんですけど！ ・・・。胡さんの姿は既に、香港のネオンの中に消えていたのだった。＞今日もビールを買ってきて、部屋で飲んだ。今、21:00p.m. 明日は日本だぁ！
23日（金）６時起床。７時前にはチェックアウト。空港ではそれほど厳重に荷物チェックされなかったような感じ。すんなり通った。で、飛行機、出発。ちょっと遅れたけれど、飛んだ。旅も終わるんだなと思った。一番窓側の席になって、雲や海がよく見えて素敵だった。
成田空港はやたら混んでた。一番心配だったのは、Ｊが向かえに来てくれるかどうかってこと。（なにしろ荷物重いからなぁ。）けど、この混雑じゃぁ会えないなって思った。電話したけど繋がらなくて、Ｈ君とこ２度目に電話したらいた。で、彼が新宿まで向かえに来てくれることになった。ありがとう。なにしろ俺、もう家までたどり着けるお金があるかないかギリギリなの。上野で乗り換えにタラタラしていたら、新宿でタイミング良くＨ君と会えた。二人で一緒に帰ってきた。ホント助かりました。
Ｈ君、うちに22時半くらいまでいてくれて、まぁつまらない土産話なぞをした。家では、ネコも元気そうで何より。家には兄貴しかいなかったけど、お土産渡したらけっこう喜んでた。
帰ってきた。疲れた疲れた。０時頃、就寝。
これが、もう15年も前の、自分にとっての初めての海外旅行の日記である。
中国のことは、いつかはまとめたいと思っていながら、全然手が付けられずにいたのはなぜなんだろう。そのくせ、まだ旅行記にもなっていない時点から、この旅のタイトルは決まっていた。「悲しき中国」。そう、初めての外国となった中国の印象は、なぜだか悲しかったんだ。・・・。もちろん、楽しかった想い出もあるけれど、国境で足止めさせられた自転車のこと、人混みの中で盗難にあったこと、言葉が通じないという現実、社会主義という仕組みが変えてしまう人間の心、橋の上に捨てられていた子供、・・・。あの時の自分は、何を感じ、それをどう生かして今を生きているんだろう。あの頃のような旅が、今の自分に出来るだろうか・・・。
初心、忘るべからず。
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