◎　1990年　3月　　悲しき中国　３　北京、上海

　３月11日（日）８時頃起床かな。寝台は、狭いと言えば狭いけど、不自由でもない。長江も、黄河も、もう渡ってしまったのだろうと思う。ずっと寝台でゴロゴロしていたけれど、夕方、布団を片付けられて、仕方なく通路の椅子に腰掛けていた。北京駅近くになって中国人に話しかけられ、しばらく筆談していた。駅には23時近くに着く。地下鉄の駅を教えてもらい、そこからホテルを目指したんだけれど、なんと改装中で閉まってるじゃんか！　さて困った・・・。仕方ないからバスで他のホテルへと向かう。バスは最寄りの駅までで、そこからホテルまで案内するという人がいたので、彼のリヤカー（！）でホテルまで運んでもらうことに。が、なんと20元ぼったくられたぁ。失敗。ホテルは、ドミトリーにしたら安かったけれど、14人くらいの大部屋。おまけに、喉、鼻が非常にしんどく、完全に風邪ひいたみたい。すぐ寝た。

　12日（月）７時頃目が覚めた。８時くらいには北京の市内見物に出発。しっかし、北京は予想以上に、広い！　まるで山手線区内を歩いて回ろうとしている感じ（！？）。天壇公園や天安門広場は、さすがに半端でなく立派なものだった。すごいや。天安門広場では、写真を撮っていいものなのかどうなのかって、ちょっと緊張する。と、遠くでマウンテンバイクに乗っている外国人らしき人がいるではないか！　むむ？！　それ、どうやって運び込んだんですかぁ〜！！って、追いかけて、肩を揺すって尋ねてみようかと思ったその時には、もうずっと向こうまで走って行ってしまったので出来なかったけれど、あれは何だったんだろうなぁ・・・。
　朝食も昼食も、パンにラーメンでは不健康だろうと、お店らしき所へ入る。しかしそこでも食べたのは、うどん（？）のようなもの。が、食べ終わってから、「票了（ピャオラ）！」と何やら差し出せと言われる。ん？　北京では、食事は配給制なのか？　そんなの、食べ終わってから言わないでよ、そんなの持ってないよ。いくらか多めに支払って、逃げるようにして店を出た。＜後注・米や小麦を使った主食には、糧票という配給切符が必要なのだとか。しかしもちろん、外国人の僕らはもらえないものだから、渡す必要もないのであった。きっと店のおばさんは、俺のことを中国人と勘違いしたのだろう。＞
　それから、地下鉄やバスを乗り継いで北京動物園へ行く。パンダを見てきた。こ汚いパンダ。その後、明日の下見として北京北駅を探しにウロウロする。結局、とんでもない方向へ歩いていた。疲れた疲れた。18時半頃ホテルに帰る。ホント疲れた。おまけに、風邪は悪くなる一方だ。シャワーが浴びられるようだけれど、どうしようかと思う。

　13日（火）６時過ぎ起床。寒い。バス、地下鉄を乗り継いで、北京北駅へ。人が並んでいないかと心配したけれど、大丈夫だった。切符も買えた。しかし、それにしても寒い。天気悪いし。万里の長城は、こんなもんだろうと思っていたとおり、こんなもんだった。それにしてもこんな所、ちょっと来るだけでいい。全部歩いてみようと思う人なんているのかな。俺が、体調悪いせいもあるけれど、すぐに下りて来ちゃった。確かに、こんなの作っちゃうのなんて凄過ぎるって感心するけれど、何なのさぁ！って呆れてしまうのはどういう訳だろ。
　長城を後にしてから、なんと、カメラのフィルムをちゃんとセットしていなかったことに気が付いた。ガ〜ン。これはショック。＜これは、あとからとりあえず写した古い方の長城。＞てことは、天安門広場も、北京動物園も、写っていないんだ！　なんてバカなことしちゃったんだろ。悔しすぎる。駅へトボトボ帰りながら、俺ってこんな所で何してんだろと、考えちゃった。しかも雪までちらついてくるし・・・。さて、駅で一人でず〜っと火車を待っていたのだけれど、ちっとも来ない。１時間くらいして、やっと人が集まって来て、それからまた１時間して、どうやら駅が違う（！）ってことでみんなで移動したり。どうでもいいから、早く俺を北京へ帰してくれぇ！と叫びたかった。・・・なんとか列車には乗れて、車内で、上海の人と知り合ってずっと英語でしゃべってた。18時過ぎくらいに北京北駅に着いたかな。やたら寒いぞ。死にそうだ。朝から何も食べていないんで、一応、夕食を食べにホテルの近くの普通の中華料理屋へ入った。メニューは適当に漢字から想像して注文する。まぁだいたい思った通りの、普通の海鮮中華だった。ホテルに帰って、シャワーも浴びて、今、21:00p.m.

　14日（水）７時には目覚める。いや、その前にう○○したくて起きたっけ。下痢しちゃった。チャーチャーなの。（昨日の夕飯のせいだよ、絶対。何だったんだろ？、あれ。）まいったな。しかもティッシュもなくなっちゃった。大ピンチ。８時半頃にはホテルを出て駅へ向かう。ロールペーパーを探したけれど、なくて困る。腹、痛いんだかなんだかわからないけど、とにかく具合は最低最悪に近いぞ。10時半の火車。何回かトイレに行ったけど、仕方ないからレポート用紙をクシャクシャにして拭いたってわけ。みじめ。食欲もあまりなかったけど何か食べないと死ぬんじゃないかと思って、駅で買ったパンを食べたけど、なんか、いつ誰が作ったのか得体の知れないパンで、涙出ちゃうくらい惨めな気分だったりする。硬臥の中舗（３段ベッドの中段）でずっとゴロゴロしてた。今回は昼間、黄河を渡ったのだけれど、思っていたほど広くなくて、なんか台風の後の多摩川みたいだなぁと思ったりした。体調悪くて、ホントこんな所で俺、死ぬのかなぁ・・・なんて。夢も見なくなっちゃったし。日本へ帰りたいってのに。

　15日（木）６時前起床。だいたい時間前に上海駅に着いたので迷わず降りられた。降りると直ぐ、バイクの兄ちゃんが乗れ乗れと言ってきた。ホテルまで30元で送るとふっかけてきたので断ったけど、バスも乗りたくないし、道もわからないし、バイクで街の中を走るのもいいかと思って20元で手を打った。乗ってる時にも頻りに話しかけてきて、たぶん市内を案内するって言ってるんだろうけれど、断った。お金を途中で払ったので、いい加減なところで降ろされるかとも思ったけど、ちゃんと目的地の宿（「バックパッカー向けの」と『○○の歩き方』に書かれてある「浦江飯店」。）に行ってくれて、爽やかに別れた。８時前に着いちゃって、８時からそのホテルのフロントへ行ったら、昼から来てくれと言われる。で、街をウロウロしていると、おじいさんがよく話しかけてくる。朝飯を食べたいと言ったら、店まで案内してくれて、お粥のような朝食をご馳走してくれた。上海のおじいさんがだよ！　日本語が上手で、日本兵に日本語を教えられたのだとか・・・。ちょっと複雑な気持ちに。昼まで、公園で時間をつぶしてたりする。
　今日は鑑真号が着く日とかで、ホテルに戻るとフロントが混んでいたけれど、朝早くに名前を書いておいたんで、ドミトリーに入れた。部屋でボーっとする。それから、街へ出てティッシュ買って、夜は、ドミトリーの仲間とめし食いに行った。ビールも飲む。上海は、北京よりも人情味のある街だと思った。今、22:10p.m.

　16日（金）６時前から目が覚めちゃった。曇り。朝食はホテルで。一応ちゃんとした朝食なんて久しぶり。その後、切符を買いに行ったけど、結局あちこち回ったあげく、ＣＩＴＳへ行けと言われ、そこで買う。＜後注・「ＣＩＴＳ」とは「中国国際旅行社」のことで、労せずにチケット等を手配するにはここで購入するのが一番だが、外国人として中国人の約２倍の料金を払うことを基本に、その他いろいろな手数料のかかる場合がある。＞広州までの軟臥370元！！　ちょっとすごい買い物をしたと思った。
　その後、街へ出て、豫園という庭園と、上海博物館を観に行く。博物館は素晴らしかった！　青銅器なんか見てて感動するものあった。じっくり見て、買い物もしようかと考えたけど、さすがに高いんでやめました。15時頃ホテルに帰って、一休みして、16時過ぎ、同じ部屋のやつと上海雑技団のチケットを買いに出る。安く買えた。＜後注・ダフ屋はたくさんいて、必ず買えると聞いていたが、俺らは劇場横のみすぼらしい事務所を覗いてみてそこで正規料金でチケットを購入した。ダフ屋から買うと高いから、まず事務所に行ってみよう。＞公演は19時から。入ると、後楽園ホールのように、席の前後はそれほど気にならない。けっこう楽しめた。21時頃終わって、帰り道、部屋の仲間３人でケンタッキーに寄ったりした。何しろ、そこでバイトしているかわいい女の子のことの方が、雑技団よりも気になるのであった。今、22:20p.m.

　17日（土）６時頃起床。日本時間と間違えて早く起きちゃった。鑑真で帰る連中を残して、川下り（黄浦江の遊覧船）に乗ろうと思って出かける。けど、本日分のチケットは売り切れだって。残念。（黄浦江で死体が浮かんでいるのを見ただとか、いや俺は人が投げ込まれるのを見ただとか、ドミトリーの仲間が集まるとそんな話しばかりだったから興味津々だったのだ。）仕方なくホテルに帰ろうかとブラブラしていたら、一昨日会った上海人が声をかけてきて、渡し船で向こう岸へ渡ろうとか言ってきた。切符まで買ってくれるし、うさんくさいとは思ったけど、人を疑うのも良くないと思って、一緒に行く。ただ、一緒に話したいのかと思ったし、公園では太極拳を見せてくれたりして、いい人なのかなぁと思ったら、やっぱり来た来た、テープレコーダーを買いたいから援助してくれないかだって。いろいろ案内もしてくれたから昼飯くらいはご馳走しようかと思っていたけど、案内料に５元くれとか、５元出すと20元だとか言い出すんで、頭に来て払わずにスタスタ歩き出したの。彼はずっと付いてきて、いろいろ言ってたけど、やっぱりかわいそうなんで５元は渡した。それにしても不快だった。
　昼頃ホテルに戻る。で、今日は川下りも出来なかったし、上海風呂に行こうと思っていたけれどそれもやめて、ホテルでボ〜ッとしてた。はがき書いて郵便局に出しに行ったり、買い物したり。夜は、ドミトリーの連中と火鍋を食べに行った。部屋は、一度はドッとみんな帰ってしまって寂しくなったけれど、今はまた、色んな国から大勢来ていて賑やかだ。今、22:30p.m.

　18日（日）６時起床。チェックアウトして、バスで上海駅へ。バスはそれほど混んでいなくて助かった。７時前には駅に着く。８時20分発の列車に乗る。軟臥ということでどんな席かとワクワクしていたけれど、（たしかに、花が飾ってあったり、鍵のかかるコンパートメントだったりするので、いい席なのだろうけれど、）これで、友達がいて、トランプしたり何かしたり出来たらいいのになぁと思った。何しろ、二日間、何もすることがない！
　上海では一人だったけれど、途中から、どうやらこのコンパートメントに移ってきたらしい香港の女の人がやってきた。しばらく彼女と英語で話していた。朝と昼は、買っておいたパンを食べる。夕飯は、食堂車の人が食べに来いってんで、行った。ちょっと高かったけど、それなりの夕食を食べた。今まだ19:00p.m.　これから広州に着けば、中国ともおさらばだなと思う。色んなことがあって、はたして有意義だったかどうか・・・。何も今、中国じゃなくたって、良かったのでは？とも思うし、それ以上に、色んなことあっていい経験もしたと思うし・・・。さっきビックリしたけど、中国に入ってから、まだ２週間過ぎたくらいなんだ！　３か月分は疲れたな。疲れたけれど、・・・益々、日本が好きになったし、友達が好きになったかな。

　

　
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「その路地を曲がって。あの地平線を越えて。」の
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