◎ 1991年 3月 グッダイ！ ＮＺ自転車の旅 2
14日（木） 7時過ぎ起床。曇り。今にも降り出しそう。でも、洗濯開始。その間、雨が降らないうちに、湖の写真とかを撮ってきた。石の教会も、見てきたよ。なんか、それほど素敵なところってものでもなかったね。10時頃、ジョージとチューチャが出発するというので、見送った。今日は俺はお休みの日。ポツポツと雨降りだしたので、テントの中で手紙書いてた。一日、降ったりやんだりで、行動できなかったけれど、移動中に降られるよりはよかったなと思う。一冊本を読み終えた。今日のテントサイトは、昨日ほどにぎやかではない。それでも、いろんな国の人が来ているらしく、英語ではない言葉でしゃべっている人が多い。それにしても、カップルが多いのは、ほんとうらやましい。
15日（金） 7時過ぎ起床。朝のうちの晴れ間もつかの間、走り出すと寒いし、霧の中を走っているような感じで、しまいには雨になる。晴れのテカポを心ゆくまで眺めることはできなかったけれど、またいつか必ず、来ることができるんじゃないかなぁと、なぜか思った。今日の行程は、地図を見て心配だったとおり、アップダウンが結構あった。それでも、標高の低いところに向かうわけで、下りの方が多くて、それは助かった。昼食は、ちょうど中間地点くらいの町で、サンドイッチなどをテイクアウトして公園のベンチで食べる。かっぱ着てたけれど、ズボンは汗でビショビショだったから。やたら鼻水がでて、これは雨にぬれて風邪ひいたかなと心配した。足は、痛かったけれどこの間ほどではない。あと何ｋｍという標識が、けっこうたくさんあったのには、気分的に助けられた。で、このジェラルディンの町には、3時頃着く。キャンプ場にテント張って、すぐ銀行でお金作って買い物をする。けっこう大きな町だ。キャンプ場もなかなかいいと思う。鼻水でるのは、どうやらおさまったか。鼻の頭の皮がむけているのに、気がついた。
16日（土） ７時起床。曇り。9時には出発できた。今日は距離もアップダウンもないだろうなと思ってて、実際、考えごとしながらチンタラ走ったわりには、2時頃には目的地のメスベンという町に着く。これほど考えごとをしながら走ったのも今回の旅で初めてだ。そろそろ飽きてきた証拠か。まぁ、天気良くなかったし、見るべき景色もなかったからではあるけれど。考えごとといっても、これといって、もう一度考えてみるほどのことでもない。ただ、ボーっと走っていたわけ。
さて、このメスベンのキャンプ場に着いてみると、なにやらお祭りみたいなことをしている。何の祭りかと聞いたら、Big
festival とだけしか言わない。これでここに泊めてくれるのかと聞いてみると、どうにか、駐車車両のとぎれた片隅にテントを張れと言われた。さて、そのお祭りだけれど、羊の毛を刈る競争あり、品評会のパレードあり、即席の観覧車あり、ロデオありの、とっても楽しいお祭りだった。きっと、明日から夏時間が終わるので、夏の最後のお祭りなのかもしれない。夜まで片づけが続いていて、しばらく騒がしかった。
17日（日） 7時起床。けど、もしもう夏時間でないなら、6時起床ってことになるか。食事して、9時出発。曇り。途中、道間違えてちょっと遠回りしてしまった。とても急な登りがあって、その登りの途中で、自転車の女性二人組を追い越す。で、登り切ったところで休んでいたら、また抜かされて、あとはとても追いつけなかった。昼食を、と思った町に二人はいて、ドイツと、スイスから来たんだと言っていた。その町には食堂はなくて、仕方なくリンゴやケーキみたいなものをお店で買って食べた。
クライストチャーチまでは、あとはずっと平坦な道だったのだけれど、すっごい向かい風で、とっても辛かった。彼女たちとは追いついたり離されたりだったけれど、どこかで食事するとか言ってるときに俺の方が追い越して、あとは俺が先にこのキャンプ場についた。キャンプ場には、テカポで会った、ジョージとチューチャがいた。テント張って、近所へ買い物へ。ビールも欲しかったのだけれど、酒屋は休みだった。夕食を作って、外で食べているとき、とても速く流れていく雲を見ていて、なんか、センチメンタルな気分になった。天気は昼頃から晴れていて、久しぶりにＴシャツ一枚で走ったりした。その空に、ポカリポカリといくつもの雲が浮かんでは流れていて、なぜだか、旅の終わりにふさわしい天気だと思った。ドイツ、スイスの女性陣は、夕方このキャンプ場にやってきて、みんな、「風がきつかったね」ってのが挨拶で、自分たちのがんばりを、自分たちがよく知っていた。明日は、洗濯したり、町で買い物をしたりしたいな。今、時計では夜の８時４０分。だけど本当の時間はわからない。ていうか、気にならないや。風が、強い。
18日（月） 7時頃起床。と思っていたのが間違い。食事して買い物に出たのだけれど８時半に開くはずの店がまだ閉まっていて、つまりやっぱりサマータイムは終わっていたのでした。てなわけで、店が開くのを待って買い物して、その頃には天気も良くなって洗濯もして、あとは町に出て、いろいろな用を済ませてきた。Ｔさんに買ったお土産を、キャンプ場に戻ってよく見てみるとメイドインジャパンと書いてあって、げ〜、さすがにこれは渡せないって思った。夜は、ステーキ焼いて、ビール飲んだ。
「ニュージーランドって、小さなカナダみたい。」って、チューチャが言ってた。「タカシ、ここもいいところだけれど、カナダもいい所よ。カナダにいらっしゃい。」そんなふうに言われたら、次はカナダだなぁって、心を馳せる俺であった。
19日（火） 7時半頃起床。曇り。こりゃ晴れないなって思った。それでも、午前中から海へ出てみようと思って、出かけた。けっこう遠かったけれど、まぁたいして迷わずに海に出た。人もいなくて、静かな海だった。晴れてるより、むしろ趣あってよかったかも。町でまた、買い物して帰る。結局Ｔさんに何を買ったかは、内緒だ。
1時過ぎ頃、キャンプ場に戻った。その頃には、朝の天気が嘘のように晴れて、雲一つなかった。寝袋を干し、日光浴しながら本を読んでた。お土産いっぱいで、うまく荷造りできるかが不安。それと、重量制限で引っかからないかな、てのが今のところの問題。明日の午前中にはもう飛行機の中なんだ。夜は、明日でお別れだねって、ジョージとチューチャに挨拶した。みんなで星空を見上げて、南十字星を探したりした。あれだよあれ。それぞれ自分の国に帰ったら、あの星は見られないんだよね。同じ星を見上げるのって、なんだか不思議な感じがするね。さようなら、ＮＺ。
20日（水）、21日（木） 6時過ぎ起床。朝から、今日は晴れるなってのがわかった。そういう日だった。ジョージとチューチャに別れを告げて、8時半に出発。空港の前で自転車を解体してバッグに入れ、チェックインする。オマラマで会った学生二人組に、空港で再会した。帰りの飛行機は、オークランドで一度降りなくてはならなかったり、その時の手荷物検査で、ザックの中からランタン出したら、これは何だと聞かれて説明に困ったり、シンガポールでのトランジットが５時間待ちで、本を読み終えたらすることなくて眠くなって、ここで寝てたら取り残されて大変だと思ったり、いろいろあったけれど、ほぼ予定時刻に、成田に着いた。帰ってきた。旅が、終わっちゃった。
カナダに行ってみよう。その時はもう、そう思っていたんだ。
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「その路地を曲がって。あの地平線を越えて。」の
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