◎ 2006年 1月 アンデス アコンカグア そして、次の夢に向かって。 ３
カエのＢＣ日記〜24日（火）
霰が降ったけれど５時頃にやんだ。ＢＣには4:00PMに到着。
今夜から一人です。ニドに比べると、ＢＣは南国です。テントは、ホアン・エレーラの兄ちゃん、マークに言って、一日10＄で借りた。・・・二人で一緒にテント生活をしたかったというのが本音です。でも、一日目に登った時、気をなくすように眠って吐き気。その際、ここには来ないでおこうと思いました。何よりも、邪魔をしたくなかった。誰かと一緒だと、相手のことを考える。すると、自分の思うようにいかなくなる。一人での生活がお互いに長いし、旅も一人でしてきたし。・・・あなたの好きなようにしてください。
胃がムカムカするので、早めに眠ります。今夜はシチュー。あなたの夢が、叶いますように！
カエのＢＣ日記〜25日（水）
山ヤさんの夢を見ました。朝9:30、やっと陽が差し込み始めて暖かくなりました。朝、テントの中が−３℃でビックリ！ 眠っている間中、寒かった。一人だから、余計に。朝ご飯は、カフェ・オレもどきに、干し芋１枚、ビスケット１枚、コンソメ・スープ。ガッツリと二人で食べたいね。
頭、痛くない？ ベルリン小屋まで行くんだよね。順応が上手くいきますように。私はＢＣで、アコンカグアを毎日見上げながら待ってるからね。大丈夫、いろんな待ち方があるから、私は私流。あなたの好きな夕焼けがアコンカグアに美しく映えるよう、祈りながら見上げています。
１月25日（水） 昨日の吹雪が嘘のようにいい天気。のんびり起床して、ベルリン小屋（5930m）まで登ってみる。調子が良ければ、ホワイト・ストーン・ポイントまでと思っていたが、小屋まで３時間もかかってしまい、やめた。調子が悪いわけじゃぁないけれど、のんびり登っていたらそんな感じになった。
ベルリンにテントを張っている日本人の青年がいた。田中くん。山屋ではなく、南米を旅するバック・パッカーだとか。少し話をした。で、その時間からニドへ戻れば、もしかして登ってきたカエと会えるかもしれないと考えたこともあり、今日はここまでとして、ニドへ下った。２時頃にはテントに戻ったけれど、カエは結局現れず。残念。てか、少々心配。昨日は本当に無事、下れたのだろうか。
それにしても、今日は本当にいい天気だった。夕日の写真を撮る。ＢＣからは、陽が沈むところは見られないんだよねぇ。・・・。９時過ぎ、就寝。
カエのＢＣ日記〜26日（木）
旅に出ると、曜日や日の感覚が薄れていくねぇ〜。今日は、プラザ・カナダまで！ 朝から、パスタをテントの中にばらまいてしまい、もったいないので一つ一つ拾っていた。ので、ニドまで行こうと思っていたのを断念。山ヤさんは戦っているのかなぁ・・・って、何と？ そう、寒さ、淋しさ、ひもじさ、そして色んな、これまでの思いと。
午後、リトさんというガイドさんと出会う。「お前は何をしてる？ 仕事しないか？」えぇ〜、ＢＣでお仕事なんて、カッコイイですぅ。
というわけで、日本のパーティーが残していった食糧を仕分けする作業をした。（日本語が読めなくて、どうやって食べるのかも、捨てるべきものかどうかなども、わからないらしい。）私にとっては超HAPPYなお仕事。捨てるようなのはもらってもいいと言われたので、山ヤさんの好きなサッポロ◯番をゲットしたい。日本人の山屋が何を持って来ているのかということにも興味津々。
あったあった、サッポ◯一番みそラーメン。それに、カツオの角煮、なめこ汁、豚汁、ポテトサラダ、麻婆茄子、...etc。米、はないなぁ。羊羹、甘納豆、わ〜いわ〜い、インスタントコーヒー！ あら〜、太っちゃいそう。早く戻っておいで。一緒に食べよう。
ＢＣは人が来て、人が去って、日々変化してます。
長居しているアメリカ人のカップルは仲良しで、いつもチュッチュしていてよく食べる。お〜い、お前まさかその靴で上に行くなんて考えてないよなぁ〜みたいなへんてこなバック・パッカーの兄ちゃん。背の高いボインな女性と無口で真面目そうな男性のカップル。女性の方は大いに社交的で、他のテントの男性達ともよく話し、あっちこっちへ行ってて、そりゃぁもう心配さぁ。それから、アコンカグア・スタッフがメチャかっこいい。彼らが赤いＴシャツを脱いで着替える時にはドキドキする私。カズオ君みたいな人が３人もいて、カズオ１，カズオ２，カズオ３と、勝手に名付けてみた。こりゃぁ〜惚れ惚れしますぅ〜。
山ヤさんは緊張の中。私はワクワクソワソワの中。
26日（木） 余分なものは麻袋に入れ、ニドに残置することにし、ベルリン小屋まで上がる。食糧等、一気にボッカしたのに昨日より早く、２時間半くらいで登れた。調子いいね。上の方のテン場に、テントを張る。３泊くらいすることになるかな。
田中くんを捜すも、いない。とりあえず、ほぼ空身で、先へ登りに行く。ホワイト・ストーン、想い出の場所まで。50分くらいとルート図には書いてあるのだけれど、それ以上にかかってしまい、標高表示も、かなり狂っている。（それにはからくりがあった！）でも、前回よりは楽に登れた気がする。
下ってテン場に戻り、しばらく一人だったけど、田中くんがテントの場所を移動していたことに気付き、で、ちょっと話をしに行く。彼は今日、ピークを踏んできたそうだ。登頂おめでとう。下ってから、どこかで会えるといいね。アコンカグアで会う青年は、大抵みんな、気持ちのいい若者なんだなぁ。
飯くって、水作って、寒くなってきたので寝た。
カエのＢＣ日記〜27日（金）
ニドへ。全然平気！ 体力作りです。昨日からやたら気温が上がり、夜中も、ドーンドーンと、（下から見上げると雪庇のようにも見える）氷河（？）の先端が崩れ落ちてきている。オイオイ、上の方は大丈夫かい？
無理はしてないかい？ 高度順応は上手くいってるかい？ もう、泣いちゃった？ 私は顔が日焼けで火傷のよう。ちょっと凄すぎ。腫れが治らない。
ＢＣでは、米カップルは変わらずチュッチュ。最初にテントを張ったところには、昨日からスナフキンがいる。
リトもニド。私もニドへ。雪がなくなっていた。山ヤさんと来た時には歩きにくかった道も、楽々。天気、良すぎです。
お父さんと息子の二人が帰って来たぁ。お父さんは左足が棒状態。前へ後ろへと、覚束ない。それでも二人で、親子で、下山してきたよ。息子くんの荷物は半端じゃないほど、でっかい。良い息子だよ。きっと、二人の間にはまた、親子の愛が育まれたんだろうなぁ。その後に、母娘の二人が下山。そうか、私も65才でチャレンジする時は、娘と来よう。
27日（金） テントマットを斜めに敷いてみた（傾斜地なのでその方がグッド。）のに、起きてみると真っ直ぐになってた。
午前中、田中くんとお別れした。10時過ぎて、インディペンデンシア小屋（6370m）へと出発。しばらく天候は安定しそうなので今日はアタックせず、万全を期して高度順化の日としよう。（500mくらいずつ高度を上げていくこと。それは手島くんから教えられていたことだった。）
今回もホワイト・ストーンまで行くのに時間がかかったなぁ。・・・で、次のブラック・ストーンはそこから50分ほどだから、・・・とせっせと登ってて、ん、何か見えるぞ、と思ったら、なんとそこが、インディペンデンシアだった！ げっ。４時間かかると思ったのに、２時間半くらいで登っちゃったよ。そこにいる人（頂上から下ってきた人。）にも、場所と高度を確認した。
となると、今までホワイト・ストーン・ポイントだと思っていた場所が、間違っているってことなんだな。そしてそう考えると、いろいろと辻褄が合ってくるのだ。そこで、下りながら（天気も好く、気圧の変化もほとんどなさそうだったので、）高度計とにらめっこして標高の確認をした。そして、今までホワイト・ストーンだと思っていた場所が、どうやら、ブラック・ストーンだということがわかった。なんじゃそりゃ！（確かに、下っていって目に付くのは、白い岩ではなくて、黒い岩なんだよね。でも、隣には白い岩もあるんですけど・・・。それで俺は、その白い方を勝手に、「僕らのホワイトストーン」と名付けました。はい。あ、だから前回持ってきたティソの高度計の精度も、まんざら間違ってはいなかったんだね。じゃぁ、本当の「ホワイト・ストーン・ポイント」は？・・・。それは、6060m辺りまで下ったこの、白い壁のことだろうか。）
さて、やれやれと思ってテン場に戻り、一息ついて、ふと足元を見た。げっ！ 片足の軽アイゼンがとれてるよ。（今回、ピッケルもアイゼンも必要ないかなと判断して持ってこなかったし、このご時世で持ってこられるのかなとも思っていた。けれど念のため、本当にちゃっちい、軽アイゼンだけは持ってきていたんだ。）アイゼンが外れたと考えられるのは、テン場近くの雪渓の途切れた岩場だろうか。あんなものでも、ないと困るからね、（インディペンデンシアで会ったサミッターにも、「クランポンは？」と聞かれてあいつを見せた時、「あぁそんなんで充分登れるよ。」と、たぶんそんなニュアンスで言ってくれたのだった。）それで、ダメもとで探しに行く。と・・・。あった、あった！ いやぁ〜、よかった。もう少しゴムベルトをきつくしておくとしよう。
今、５時過ぎ。ベルリンのテン場は次々に人が上がってきて、賑やかになってきた。汚くて、泊まる人もいない小屋にも、今夜は団体さん（？）が入るようだ。みんな、たぶんガイド山行で、登ってきてすぐ翌日、アタックしていくんだなぁ。登らせる方のガイド屋さん達（アコンカグアでは多くは、馬屋さん・ミューラ業者が、ガイドもする。）も、準備で大変なようだった。
俺も明日は、いよいよアタックだ！
カエのＢＣ日記〜28日（土）
暑い日が続いている。ニドに雪はなし。あれじゃぁ水不足。リトさんと話をしてて、ベルリンはここから２時間だから行って来な！と言われたが、私はニドまででいいんです。8:50ＢＣスタート、11:05カナダ着、11:20にカナダ出発で、13:20ニド着。かなりの好タイム。って、私は何をやってるんだかなぁ・・・。
ビール片手にアコンカグアばっかり眺めていたMr.ビーン似のおっちゃんは、今日になってやっとカナダへ行って来たらしい。いつも履いているサンダルではなく、お〜凄い！ちゃんと雪山用です。でも残念なことに、もう雪、ありませんから〜！！
ニドでリトと話をしていた時、「今朝も天気が好かったから、お前のだんなはきっとチャレンジしているよ！」と言われたけれど、立てたかなぁ〜って、雲のかかっている頂上を見上げて思っていました。明日は予備日だっけ？ いつ戻ってくるのかな。・・・。
大丈夫。きっと、登れる。
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